「おい、…あれ、土星人じゃないか?」
と突然、矢野がぼくにささやいた。


「え?」


――見ると、ぼくらの右手の少し向こうに、浴衣姿の和尚と結花が並んでいた。


パンと花火が上がると、手前に立つ結花の顔が明るく染まる。
その横顔が、あまりに美しくはかなげで、ぼくは思わず息をのんだ。
和尚はそのかたわらで、うつろな表情で閃光を見ている。



ぼくは、彼ら二人が見ているものは、ほんとうに花火なのか?という考えが頭に浮かんだ。
もしかしたら、彼らが見ているものは、自分たちの未来じゃないだろうか?
彼らは、かげろうの命のように短く、終わりの近い恋を生きている。