夏休みに入ると、ぼくは予備校通いを始めた。
夏休み限定の短期コースだ。
「他校のやつらと勝負するのは、いい刺激になるな」
ぼくは、学校で同じクラスの矢野に言った。
「そうだな。でもさすがに、おれらの高校の《土星人》レベルのやつはいないな」
その頃、和尚は、新しいクラスのなかで《土星人》と呼ばれていた。
勉強からスポーツまで、すべて人間離れしているという意味だ。
「あれはバケモノだから、ほっとけばいい」
「土星人、予備校通いしないのかなー」
「家庭教師がついてるって噂だけど」
「だろうな。日本の大学とは試験内容が違うもんな」