「そんなぁ。じゃあ、来た意味ないじゃない」

「そんなこと言わないでよ。ぼくだって、きみを教えることくらい出来ますよ」

ぼくは、ここぞとばかり熱心に彼女を口説いた。

「でも。和尚が教えてくれるからって来たのに」

「二人で一緒に勉強するのもいいんじゃない?」

「…なんだか変。翔ちゃん、和尚になにか言ったの?」
結花の顔つきが、急に険しくなった。

「なにも言うわけないでしょ」

「じゃ、どうして?和尚は、約束を破ったりする人じゃないと思う」

「ちょっと」

結花のあまりのしつこさに、ぼくは少し腹が立ってきた。