「ほう。なぜそう言える?」

「だって、USA!はただの4分音符の塊じゃないか。チャチャチャはそれになんと、16分音符が加わるんだぜ?」

「なるほど。声援の難易度がより高いというわけか」

「きみにナショナリズムが芽生えていないのは、同級生のぼくとしてはじつに遺憾だ」
ぼくは、意味もなく威厳を示してみせた。

「それで、おれをどうしようっていうの?」

「そうだな。――まず、きみの愛称を決めてやるよ。《和尚》でどうだ?」

「《和尚》? なんだ、それは」
白人顔の和久井が、情けない表情になった。

「和久井の和と尚人の尚をとって、和尚。
これできみも立派な日本人だ」

「ひでぇなー」

「ぼくのことは、翔でいいよ」


和尚はにっと笑い、ぼくをめがけて拳を突いた。
これで、ぼくらの友人関係は成立した。