(こいつは、自分の気持ちを隠し通す気だ)
とぼくは思った。


だが、それは和尚の試合放棄のサインでもあった。

和尚がアメリカに進学するとすれば、たとえ二人が惹かれあっていても、いずれすぐに離ればなれになる。

彼の性格からみて、ぼくは彼が、そんな実りのない恋を育てるとは考えられなかった。

おそらく、一時的に結花に気を取られたとしても、すぐに体勢を立て直して、何食わぬ顔で学年トップを歩き、ひたすら前を目指していく――実際彼は、そんな男だった。

だから、ぼくは、いま、結花と和尚のあいだに芽生えかけている恋を、どうしても摘み取らなければならないと思った。


「おい、いつかの話だけど」

ぼくは和尚に交渉を持ちかけた。