結花は、ぼくににっこりと笑いかけた。
でも、その言葉とその笑みは、ほんとうにぼくに向けられて発信されているのだろうか?

ぼくはこの頃、結花に対して、素直に向き合えずにいる自分に気がついていた。


和尚は和尚で、こころここにあらずといった感じだった。


「おまえ、最近、冷たくないか?」

ぼくは、教室の古い電気ストーブで手を温めながら言った。

「そうか?悪いな」

和尚は、机の上に何冊かの分厚い本をひろげて、熱心になにか英語を書いていた。

「悪くはないけど。なんかぼくに隠し事してない?」

「してるよ」
と和尚はあっさり言った。

「なに?聞き捨てならないな」

「進路のこと」

「え??」