文化祭当日のその時間、ぼくはほとんどやけっぱちになっていた。


――「24番、桜井結花さん」とアナウンスが流れる。


「おー……」


…グラウンドから、大きなため息が洩れた。
結花の水着姿だ。


夏の海でも見たはずだったが、彼女は、いちだんとメリハリのある女らしい体型になっていた。
なんと、少女が大人の女性になるスピードは速いのだろう。
太陽のもとで健康的に焼けた肌が、彼女の白い歯と輝く目をさらに引き立てていた。



ぼくは、結花が多くの人のまえで笑顔をつくっているのを、とてもじゃないが落ち着いて見ていられなかった。

「おい、和尚…」

ぼくは、隣で見ていた和尚に、D組のソバでも食いに行こうぜ、と声をかけようとした。