海から戻ると、夏休みが待っていた。
ぼくと結花は、あちこちデートした。
それこそ、近所の盆踊りから水族館なんかまで。
「ねぇ、この頃、あんまり手をつながないね」
ある日、ぼくは街の雑踏のなかで結花に言った。
「え?そうかなぁ?…翔ちゃんの思い過ごしだよ」
「じゃ、つなごうよ」
ぼくらは、いつものように手をつないだが、どことなくぼくは、ぎこちなさを覚えた。
まるで、結花は、その手にのみ神経を集中して、身体をこわばらせているようだった。
こんなことは、いままでなかった。
ぼくはそっと結花を盗み見た。
彼女は、最近、見違えるほど美しくなっていた。