ぼくは、立ち上がって、バカみたいに値段の高いオレンジジュースを買いに、海の家へ歩いていった。

そのあいだ、結花はじっと身じろぎもせず、波間を見つめていた。



「ただいまー」と、和尚と愛子が、明るい笑顔で帰ってきた。

「和尚、泳ぐの上手いね~」

「おれ、サンフランシスコ生まれなのよ」

「なんだ。じゃあ、音楽聴きながらローラースケート履いてたわけね」

「そう、ロックンロールを聴きながらね」

「何年代の人なのよ、それ」

彼らは、冗談を言って笑いあっていた。
ぼくも、つられて笑っていた。
でも、ぼくはなにか空気の異変を感じていた。
それは、結花の様子がおかしかったからだった。