彼らは、一瞬ぎゅっと抱きしめ合った。
だが、和尚はすぐデイバッグを手にとって、後ろを向いて手荷物検査場へ大股で歩いていった。


「和尚!」
結花が叫ぶ。


「わたし、チケット持ってるのよ!」


和尚が一瞬、振り返って凍りつく。
ぼくは、もう駄目だと思った。


「来るな!」


その瞬間、なぜかぼくの手は、結花の背中を押していた。


「行け!」