「あのっ白鳥さん」

昼休み、あたしは長谷部くんに呼び止められた。

「すみません。ちょっと手伝ってほしいことがあって…」

「あたしでいいなら。なに?」

長谷部くんは軽く俯いて言った。

「僕、気になる人がいて、その人ともっと仲良くなりたいっていうか…その…何て言えばいいか分からなくて…」

「うーん…普通に言えばいいんじゃないかな。あっ!あたしでよかったら、練習台になってあげるよ」

「えっえっ!!い、いいですよ!そんな!!」

長谷部くんは両手を振って断った。

「あ、そんなに嫌ならいいけど…頑張ってね!」

「あ、そ、そういうワケじゃなくて…」

帰ろうとしていたあたしには、あまり聞こえていなかった。

「…あのっ!!」

長谷部くんが叫んだ。

「どうしたの?」

「あの…ぼ、僕と仲良くなってくれませんかっ!?」

「…!?」

あたしはビックリして固まってしまった。

そんなあたしを見て、長谷部くんはハッとした顔をした。

「あ、ぼ、僕…す、すみませんでした!!」

そう言って長谷部くんは走って行ってしまった。

「…今の、練習…だよね?」

長谷部くんの姿が見えなくなった後も、あたしは固まったままだった。