「ううん。俺が送りたかっただけだし。それに、ちょっとこっちに用あるし」

「あの…学校でも、今も、ありがとうございました」

「…別に、感謝されるようなことは何もしてないよ」

「でも…」

「そんなにお仕置きされたいの?」

「…先輩はいつもそう言うけど、実際は何もしないじゃないですか」

あたしがそう言うと、黒崎先輩はあたしを壁に押しつけた。

そしてあたしに言った。

「お仕置き、してほしいの?だったら今、してあげてもいいけど」

「…っ!!」

真っ赤になったあたしを見て、先輩は笑った。

「また今度ね」

そして耳元で囁いた。

「それじゃ、また明日」

あたしは恥ずかしくなって、大急ぎで家へ入り、部屋へ駆け込んだ。

「もう、なんなの…」

あたしは窓の外を見た。

「嘘…」

さっき『用事がある』と言っていたのに、先輩は逆方向へ歩いていた。

「あれは…嘘?」

あたしが気を使わないようにするため?

「黒崎先輩…」

やっぱり黒崎は優しい…

あたしは先輩に囁かれた左耳を押さえていた。