(そろそろあたしも会議室に行かないと…)

「…ふぅ。彩音ちゃん、そこにいるんだろ?隠れてないで出てこいよ」

バレてた…

「…いつから気づいてたんですか?」

「始めから。お前が歩いてるのも見えたしな」

そ、そんな…

「で、聞いてたんだろ?何か感想は?」

「感想は?って…」

あたしはきょとんとしてしまった。

「まさか、昼の信じてなかったの!?」

「あ、あれって…」

水沢先輩は溜め息混じりに言った。

「まぁムリもないか。でも、ホントだから。もう俺は、お前を利用するためにじゃなくて、普通にお前に好きになってほしい」

「嘘…」

「さっきの聞いても、信じないか?」

「――っ!!」

あんなこと言ってたのを聞いたら、信じざるを得なかった。

「ゆっくりでいいから、俺のこと、好きになってくれ」

「水沢先輩…」

「…ちなみに、俺のこと、まだ嫌いか?」

あたしは何も言わず、首を横に振った。

あまりにも素直な水沢先輩を見て、苦手意識が解けていた。

「良かった。…ちょっと頼みがあるんだけど、いいか?」

「はい」

あたしが返事をすると、水沢先輩はあたしのことを抱きしめた。

「きゃっ!!」

「悪い。いきなりこんなことして…でも、しばらくこうさせてくれ」

「…はい」

会議室に集まる時間は過ぎていた。

だから候補生は誰も見ていないと思っていた…