…もしかして、気づいてたのかな。

あたしが先生の言葉、嫌がってたの。

もしそうだったら…

「あの…」

「ん?どーかしたの?」

「…ありがとうございました」

「…何のこと?俺はただアイツがうるさかったから言っただけだけど。キミ、何か勘違いしてるんじゃないの?」

「…」

返す言葉もなかった。

「…あ、これ、片付けますね」

床に散らばったコップの破片を見て言った。

「ん。よろしくねー」

破片を拾おうとしてしゃがんだ時、手を掴まれた。

「と、言いたいところだけど、女の子にこんなことさせられないから。キミはやらなくていいよ」

「…黒崎先輩、ありがとうございます」

「別に。これは俺がやったことなんだから自業自得だって。やっぱりキミ何か勘違いしてるよ」

「…」

やっぱり返す言葉が見つからなかった。

でもさっきのとは違う。

さっきは黒崎先輩の言ったことが衝撃的だったからだけど、今は違う。

なんだか嬉しい。

本人は違うって言ってるけど、なんだかんだでやってくれた。

さっきのも、きっとあたしが気を遣わないようにするためだったんだ。

「あ。その代わりにペナルティ2倍ね」

「ちょっ!それ何ですか!?聞いてませんよ!?」

「ペナルティなんだから、キミに聞く必要ないでしょ」

「――っ!!」

「あーっと、話をまとめると、俺らはアピールってやつをして票を稼げばいいんだよな?」

来生先輩が簡潔にまとめてくれたのにもかかわらず、塩崎は浮かない顔をしていた。

「塩崎、分からないことでもあるの?」

「そうじゃなくってよ…その…お前は、さっきアイツが言ってたみたいな状況になった時…どうするんだよ?」