「菜子ちゃーん」
階段の下から由紀さんのあたしを呼ぶ声がする。
「荷物は届いてたー?」
「はい、大丈夫でーす」
部屋の扉を開けて返事をした。
『由紀ちゃんに迷惑かけないで過ごすのよ。それからお手伝いもすること』
由紀さん家でお世話になるあたしと母との約束である。
地元から片道3時間もかかる場所にいるのは、明日から始まる高校生活のため。
母の中学からの友人である由紀さん家に居候することになった。
あたしが行く高校は由紀さん家から自転車で15分くらいのところにある。
あたしがそこの高校に受かったと聞いた由紀さんが
『あたしんちから通えばいいじゃない!菜子ちゃんなら大歓迎よ!』
といったのがきっかけだった。