私は奈美の最後の質問にだけ答えた。
「なんかお願いがあるんだってさ」
「それを聞いてあんたは逃げてきたと」
「うん。だけど、私思ったよりちゃんと話せたんだよ、男と」
そこで奈美は大きな息をはいた。
正確には溜め息とも言う。
「ひとまず歩きながら話しましょ。
あ、あと鞄」
奈美はそう言って、私に鞄を返した後、外へと歩き出す。
まだ内履きだった私は急いでローファーに履き替え、後を追った。
「亜莉子、もっとちゃんと話してくればよかったのに。
そうすれば、男嫌いを少しでも治せたかも知れないでしょ」
私が追い付いたのと同時に奈美がクルッと振り返った。
それに私は首を振る。
「だって最後まで聞いてたら、危険だと思ったんだもん」
「…はい?」
奈美は目を見開いたあと、肩を震わし始め、遂には大声で笑い出した。
訳が分からない私はただポカンとして奈美が笑い終わるのを待った。
「奈美?」
「ごめんごめん。
亜莉子が勘違いさせるようなこと言うから」