「皮肉を言いたいならどんなに言っても構わない。現金だと言いたいならそう言ってもいいよ。でも、やるからには嫌々やりたくないし、興味があることだったからちょっと嬉しかった。ただそれだけ」
言い返されると思っていなかったのか、江坂奏は少しポカンとしていた。
しかし、すぐ口元に笑みを浮かべる。
「姫野さんっていいなー」
「……はあ?」
何を言い出すんだ、こいつは。
「亜莉子ちゃん、カッコイイ」
お姉さんまで。
「そうやって自分の非を認めるところ、嫌いじゃない」
「……どうも」
「姫野さんに目を付けてよかった」
「…はあ」
「ところで話は戻るけど、ここの探偵は姫野さんが思っているようなもんじゃない」
え?
どういうこと?
推理とかしないの?
『お前が犯人だ!』とか言わないの?
「ああいう探偵は推理小説だけのもんだよ。実際の探偵はもっと地味」
「じゃあ、浮気調査とかそういうのだけ?」
「まあ、それもするけど。ここのはちょっと重要な仕事を受け持ってる」
重要。
「なにをするの?まさか危ないこと…?」