目の前のテーブルには昨日食べそびれたプリンが並ぶ。


「さ、亜莉子ちゃんどうぞ」


お姉さんが準備してくれたみたいだ。


ありがとうございます、そう言ってプリンを口に運ぶ。


やばいとろける美味しい!


舌に広がる感触はとても心地よいものだった。


「美味しい?」


そう聞くお姉さんに頷き、プリンはひとまずテーブルに置いた。



江坂奏とはテーブルを挟んで向かい合う形で座っている。


「さっそく教えて欲しいんだけど。どんなバイトなんですか」



「簡単に言うと探偵」


「探偵?……ってええ!あの探偵!?推理とかしちゃうカッコイイ探偵!?」


頭の中には今まで読んできた推理小説の探偵の名前が次々と思い浮かぶ。


みんな最後には必ず事件を解決して、かっこよかった。


そんな探偵がバイトなの?


憧れていたぶん、嬉しい反面やっぱり面倒臭いだろうな、と思ったり。


でも、無理矢理やらされるのなら全く興味がないことより断然いい。


「あんなにやりたくないって言ってたのに、少し興味のあることだとすぐ表情変えちゃって」


「ちょっと奏!」


皮肉る声。

まあ、それは当然の反応だろうなと思う。

さっきまでどんなことでもやりたくない、そう心に誓っていた。

でも今は状況が違う。


だって捕まってしまったから。

見えない鎖で繋がれてしまった。

今の私にはその鎖を外す方法が思い付かない。


嫌だ嫌だと言いながらやることだって出来る。


でもバイトをすることは決定事項だ。


バイトだって働いてお金を貰って、ちゃんとした仕事。


仕事を引き受けるからには無責任なことは出来ない。


それに腹をくくると決めた。


決めたからには私はやり遂げたい。