二人が降りてきてから数分。
空気ははりつめていた。
「一体あなた達二人は何がしたいんですか」
「イタズラ」
そう答えたのは江坂奏だ。
「これじゃイタズラの域越えてドッキリだよ!差し押さえドッキリだよ!」
もう八つ当たりに近かった。
昨日の分の怒りも爆発して私は冷静さを失っていた。
「そもそもなんで昨日教えてくれなかったの」
「なにを?」
「制服忘れていったこと」
「だって面白そうだったから」
「そんなんじゃ言い訳にすらならないよ!」
もはや愉快犯だよ!
私が本気で怒っているのを悟ったお姉さんは、こそりと私と江坂奏の間に割り込んだ。
「まあまあ。亜莉子ちゃん落ち着いて」
「これが落ち着いていられますか!」
「あたしからも謝るわ。ごめんなさいね、ちょっとやり過ぎた。奏も謝りなさい」
「姫野さん、ごめん」
素直に頭を下げる江坂奏。
いや、真剣に謝られるとそれはそれで申し訳ない感じがする。
というか江坂奏はちゃんと謝れる人なのか。
昨日の感じからすると、意地でも謝らない頑固な人だと思ってた。
真剣な謝罪を受け、怒っているのも馬鹿馬鹿しく思えてきた。
「…私の方こそ、すみません。必要以上にキレてしまって」
妙に白々しくなってしまった雰囲気。
それを打ち消すように明るい声が聞こえた。
「さあ!辛気臭いのは終わり!お家にさっさと入りましょう。ほら、亜莉子ちゃんも来て」
「え、差し押さえじゃないんですか!」
「まだ信じてたのかよ!」
はい、江坂奏から鋭いツッコミをいただきました。