あまりにもキラキラした瞳で見詰められ、ひるむ。


「ね、握手!握手してくださいっ。今度みんなに自慢する!」


だからなんだこのテンション。

私は有名人か。


しょうがなく手を握ると、男の子は軽くガッツポーズをして私の周りをくるくる回っている。


「ちょーラッキー!」


やめてくれ、目が回る。

しかし、よく考えてみればこの恰好で家に帰れるわけがない。

それに今は誰かしら家にいるから、見つかったら間違いなくネタにされる。
それは断固拒否したい。

かと言って着替える服もないし、所持金はニ桁の額しか持っていない私にとって、買うことすら出来ない。

藁をも掴む想いで、もうこの子に頼むしかない。


「ちょっとお願いがあるんだけど、聞いてくれるかな?」


無理矢理肩を掴み、動きを止めて尋ねた。
なんか今、誘拐犯の気分だ……。


「いいよ!オカマのお兄ちゃんの願い事なら半額にしてあげるよっ」


え、金取るの?

フリーズした私を見て大袈裟にため息をつく。

「もー、冗談だよ」

いや待て、さっきの目は本気だったよ!あれはハンターの目だよ……。


でも、確かにタダで聞いてもらうのはなんだか気が引ける。


私は財布の中で大切に温めておいた全財産(76円)を男の子に差し出した。


「どうかこれで……君のお母さんの服を貸してください」