帰り道。
私がそれに気付いたのは、あまりにも不可解な出来事が連発したからだった。
江坂奏の家を出た後、悶々と頭を抱え、家路についていた。
しばらく歩いていると見慣れた住宅街に景色が変わり、ホッと一息つく。
一度芽生えた不安は中々取り拭えなかったが、不思議と焦りもせず落ち着いていた。
もしかしたら、さっきまで知らず知らずのうちに緊張していたのかもしれない。
手にはうっすらと汗をかき、じわっとした暑さが襲いかかる。
とりあえず、早く家に帰りたい。
そして頭の中を整理したい。
「昨日サキがさぁ、アツシとケンカしたらしくて別れるかもしれないんだって」
「え、それマジ!?」
「マジマジ」
「ならうちらチャンスじゃん!」
「そうそう!アツシモテるからさーフリーになったら即狙いに行かないと!」
「きゃータカコったら肉食ーこわーい!」
「あたしらサキに怒られちゃうじゃーん」
向こうから女子高生の集団がなにやら騒がしくこちらに歩いてくるのを見て、私は歩みを速めた。
おい、君たちは公共の場でなんちゅー会話をしてるんだ。
私はこういう集団が苦手だ。
いかにもキャピキャピしたギャル風の女の子達は、化粧っ気が全くない私と比べると可愛くて、なんだか自分が恥ずかしくなる。
出来ればすれ違いたくないな……。
そう思っていたが、なにしろこの通りは駅に繋がる道だから案の定、すれ違ってしまった。
甲高い笑い声に苦手意識を感じながらも、やっぱりこういう子達は可愛い。
そんな羨望の眼差しで見つめる。
すると、私の熱い眼差しに気づいたのか、すれ違った女の子達がチラチラ見ながらこちらに引き返してきた。
こっちに来る。
まさか私じゃないよね?見すぎて変態と勘違いされた?
どんどん近付いてくる。
一人あわあわしながら
私じゃありませんように、そう願う。
必死に願うも、私の通行を阻むようにして立ちはだかる女子高生達。