アンティーク調、というべきなのだろうか。
何十年も前に建てられたような洋風の雰囲気がある建物で、レンガのような外壁はところどころボロボロに崩れていて蔦が這っている。
草もボーボーと生い茂っており、いかにも幽霊屋敷と呼ばれそうな感じだ。
でも、今の私にとって刑務所に連れて来られた罪人。
そんな気分だ。
私はチラリと江坂奏に視線を移し、ほとんど無い目力で訴えた。
(ここに入るの?)
「もちろん」
どうやら私に拒否権は無いようだ。
まあ、繋がれた時点で元からないけどね!
でも。
「やめてー連れてかないでー!つか手錠痛い痛い痛いっ。引っ張んなアホッ!」
「あれ、姫野さんどうしたの?もしかして、怖いとかじゃないよね」
「まさか」
「なら、早く入ろうよ」
「いやー、今は入りたくないなーなんて…痛い痛い引っ張んないでゴメンナサイ!」
必死の抵抗も軽くかわされ、引き込まれるように連れてかれた。
もしかしたら、本当に逃げられないかもしれない。
でも、手錠には鍵がある。
鍵があれば手錠が外れるように、何かキッカケがあれば逃げることが出来るかもしれない。
逃げる手段がゼロになったわけじゃないのだ。
少しでも可能性があるなら、私はその鍵を手にしてみせる。