周りの視線を感じながら、江坂奏に連れられていく。
私は罪人なのでしょうか。
そう問いたい気分になる。
それに、この人に空気を読む能力は備わっているのだろうか。
さっきの行動といい、呼び出された時のトイレ発言といい、俗に言う『KY』の雰囲気が漂っている。
それとも、私を油断させる為の作戦なのだろうか。
会計をしている間も、店員さんに怪訝な目をされてとっさに俯く私とは違い、江坂奏は堂々としていた。
周りの評価のような完璧な人ではなく、実際に近くで観察すると、江坂奏はよく掴めない人物だということが分かった。
「ねぇちょっと」
幸い、ここはあまり人の出入りが少ない場所で、本屋を出ると同時に私は声を掛けた。
が、返事は無い。
「ちょっとってば」
手錠で繋がった手を引っ張ると、江坂奏は体制を崩し、私の方を見た。
「あ、ごめん忘れてた」
なんなんだコイツは。
もう空気が読める読めないのレベルじゃない。