静かな店内でページの捲る音だけが響く。


こんなに熱中して本を読んだのはいつぶりだろう。


本と言っても雑誌だけれど、随分久しぶりに活字を読んだ気がする。


こう見えても私はかなりの読書家で、1週間に五冊ぐらいのペースで読んでいた。


なのに、ここ最近は精神的ストレスで集中できず、ほとんど手をつけていない。


それもこれも、全部江坂奏のせいだ。


事の始まりは呼び出されたあの日から。

あれからずっと江坂奏は、私に付きまとっている。

いや、正確には私の行く手を遮っている。


江坂奏は朝のSHRが始まるまでずっと私の席を陣取り、授業が終わると同時に立ち上がり私に近づいてくる。


咄嗟に 逃げ出す私をちらっと横目で見ると、それ以上は追いかけることもせず、また私の席に座り、後ろの戸山さんと喋りだす。


それが毎時間×三週間もだ。

心休まる訳がない。

しかも、後ろの席でもある戸山さんからは「江坂君てもしかして私のこと…」と言った内容のものを延々と聞かされる始末である。