そして最後にこちらを見た領は、杏里の姿を見るなり、勢いよく立ち上がった。



──ガタンっ!




椅子の倒れる音に、何人かの生徒がびくりと首をすくませたが、領はそれに構わず、只杏里を驚いた目で見ていた。


「……」



誰も何も言わない。


先程まで騒がしかった室内が嘘のように静まり返った。




「…えーと…?」



ついに堪らなくなったのか、春斗が杏里に話し掛ける。


「…九条、だよな?…領に…何か用?」