「内緒だって言っただろ」


黒田さんが小声でそう言った。


私から携帯を取り上げて、再び涼太と話し出す。


「悪い悪い。

…ああ、あれはな、『私の初めて』って言おうとしたんだ。


悪いな、涼太」

黒田さんはそう言うと電話を切った。


「何メールしたんですか?

何言ってんですか。」


「ん〜?

『私の初めて黒田さんに見立てて貰ったハサミを買う』って言ったんだ。

ま、途中で区切ったけどな。それに普通は『私が』だな。

メールの内容は…これ。」

差し出された携帯の画面には私と、カフェオレが写った写真と

『いただきます』

の一文だけ。


「…普通のメールですね」


「普通だろ?」

黒田さんはニッコリ笑って

「何で涼太は電話してきたんだろうな〜?」

と楽しげに言った。