瞬と休悠太は地元につき
百合の家の前まで行く。
懐かしい風景にひたりたい気分だが
今の瞬にそんな余裕なんてなかった。
百合の顔が頭から離れない
百合の家へ近づけば近づくほど
焼き付く百合の顔。


「…い!……ん…しゅ…!
おい瞬!人の話聞いてんのか?」


「え、あ、ああ悪い聞いてなかった」


悠太は瞬の表情から何を考えているのか
すぐにわかった。


「百合、だろう?」


瞬は驚いたがすぐに「ああ」と返事し
いつもとは違って
真剣な顔をする悠太から目を逸らす


「俺もさっきから百合の顔が
頭に焼き付いて離れないんだよな。
百合の家に
近づけば近づくほど離れねぇ」


「俺もだ」


瞬がそう答えると同時に
百合の家についた。
《野中》と書かれた表札は今でも
変わっていない。

悠太がインターホンを鳴らすと
一年振りに聞く百合の母
加代子の声がした。


「早坂悠太です」


「鍵なら空いてるから
入ってくれて大丈夫よ」


「はい」と返事すると
二人は百合の家へと入っていった