「全く格好つかないし!」



そう言いながら無茶苦茶に頭を
掻いている。



「格好なんて気にしなくてもいいんじゃん?」



どうにか笑いを止めた。



「好きな人の前ではいつでも格好よくしていたい。これって誰でも思うことでしょう?」



確かにそうだね。




好きな人の前ではいつもいい自分でいたい。




でも・・・あたしは




「あたしが好きな人に求めることは1つ。安心感。」

「安心感?」


「そう。一緒にいる時に寄り添っている時に肩に力を入れることもなく、心が暖まるような気持ちにしてくれる。そんな相手があたしは欲しい。」




橘くんはじっとあたしを見ていた。




その瞳の中にいるあたしは自分でも驚くほど落ち着いていて少し微笑んでいるようにも見えた。




この何週間かあたしのそばを離れず何度も口説いてきた。



あたしがこんな女でも可愛いと言ってくれた。



いつも劇では男役ばかりのこんなあたしを好きだって言ってくれた。




どんなあたしだってあたしはあたしだと言ってくれた。




それがどれだけあたしの心を満たしてくれていたかも気付かずにあたしは彼を突き放していた。




「ねぇ、あなたはあたしに安心感を与えてくれる?」