「だから、この人を絶対に俺のものにしてみせるって思ったんです。」



橘くんは抱き締めていた腕を解きあたしの肩に両手を置いた。




「でも、その人は俺を後輩としてしか見てくれないし、女子には女神のように甘く微笑むのに俺には怒るだけ。」




当たり前じゃん。



気を緩めたら何をされるか分からない相手を前にしたら、いくら腕の立つ侍だったとしても身構えるでしょ。




「でも・・・それでもどんどん惹かれていった。

好きになっていった。
大好きになっていった。」



いつもなら突き放しているのに今日は何となく話を聞いていないといけない気がした。



それに自然と頬が緩んでいく気がした。さっきは抵抗していた腕ももうぶら下がっている。




「でもセンパイは他の女の子とは違うからちょっと口説いただけじゃ見てもくれない。だから、さっきみたいに素直に反応されると嬉しくて、可愛くて・・・それだけで俺は満たされて、さっきみたいに上機嫌になっちゃうんですよ。」




それを聞いてまた更に赤くなった気がする。



「だから、分かって下さい。俺は世界中の女の子に囲まれるよりも、センパイ一人だけに寄り添ってもらうだけで最高に幸せなんですよ。」



クスッ・・・ホントに大げさなんだから。




何だかそんな話を聞くと今までのことも全部許してしまおうとさえ思えた。