そうして呪文はあっという間に唱え終えられた。

だが俺の予想に反して、特に体調が変わるだとかそう言う事もなく。

一体彼らは俺に何をしたのだろう、という疑問だけが残る行為であった。

呪文を唱え終えた後のそんな二人の表情は満足げではあった。


「お前ら、この里に何用だ」


聞き慣れた、だけど何処か威圧感のある低温が背後から響く。

振り向けばそこには険しい目つきをした雪の姿。あの穏やかな姿はどこにもない。

ああ、そういえばそうだったな。月花もそうだけど雪は心を開いた奴や、

海理のように服従を誓った奴以外にはこんな態度を取るんだった。

殺気だって怖いはずなのに、何故だろう。

買ってきた野菜達を手にしているから少しそれも薄れてしまっている気がする。