「あ、彩十さん! それから雪さんも。長様倒れたんですよね? 大丈夫ですか?」
「ねえねえ。彩兄(さやにい)、海理兄様大丈夫なの?」

海理の事は忘れていたいのに、長倒れたという珍しい出来事はやっぱり広まるのは早いもので。

出会う住人、老若男女問わず誰もが海理の無事を確かめてくる。

頼むからやめてくれ。頼んだ所で変な目で見られるのは必至だろうし、

海理は皆に慕われているから心配しない奴の方がおかしいだろうけど。


「ん?」


雪が売られている野菜を見ている頃、近くの茂みで見覚え事のある人影を見掛けた。

それは明らかにこの里の住人ではない。だってそいつらを最後に見たのは村だったから。