……今すぐに泣きたかった。
でも、そうしたら、恭にい困るよね……?
「ど、どーも。よろしくお願いします……。」
泣きたいのを我慢して、笑顔を作ってあいさつした。
「奈津希には話そうと思ってたんだ。……実は、最近美柚と付き合い始めたんだ。」
……苦しくて…息ができなくなりそう…。
とどめを刺された気分だよ……。
「……そっか。」
……悔しい…。
けど、並んで微笑む2人は、とても幸せそうだった。
私なんかより、恭にいの隣にいるのは、美柚さんの方が似合ってるって思った……。
「きれいな人だね。おめでとう……、恭にい……。」
こんなに悲しい『おめでとう』を言うのは初めてだよ……。
胸が張り裂けそうに痛い。
だって、
いくら恭にいが幸せそうでも、
……私は恭にいのことが好きだから、
ちゃんと祝福できないよ……。
「ありがとう、奈津希。」
なのに、恭にいはいつもと変わらない笑顔で私にお礼を言う。
なんだか余計に切なくなった……。
もう私は、チョコを渡すこともできないんだ……。
こんなことになるなら、
ダメでももっと早く渡せばよかった。
今になってすごく後悔している自分がいる。
――涙が今にも溢れそう。
「あっ、恭にいごめん。用事あるんだ。帰るね。」
私は最後の力で精一杯の笑顔を作って、駆け出した。
――私はとにかく遠くまで走り、息を切らして公園のベンチに腰掛けた。
公園のベンチからは夕日が真ん前に見える。
夕日を見たら、もっと切なくなって涙がとめどなく溢れ出した。
……私はずっと恭にいのこと想ってきたのに、何でよ…?
初恋だったのに、……こんなに簡単に終わっちゃうの……。
こんな想いなんて、
この夕日と一緒に沈んで
消えてしまえばいいのに――。
私はチョコのことを思い出して、鞄から取り出した。
せっかくきれいにラッピングしたのに、私は雑に開けてチョコを出す。
誰ももらってくれないんだから、自分で食べちゃえ。
そして、やけになって口に放り込んで広がった味は、
苦い苦いビターチョコレートの味と、
しょっぱい涙の味だった……。
これが私の初恋の味。
次は絶対、甘いミルクチョコレートみたいな恋をしてやるんだから――。
―――End―――
〜あとがき〜
最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
バレンタイン用に初めて短編を書かせて頂きました。
短い物語の中で伝えたいことを書くのは、長編とはまた違う難しさがありますね。
当然ながら、私はまだまだ未熟だなと思いました。
また、今回の物語の内容ですが、甘くはない切ないバレンタインを描いてみました。
もし読者様の中に想いを伝えようか迷っている方がいらっしゃるなら、奈津希のように後悔しないよう頑張って想いを伝えてほしいなと思います。
ぜひ皆様、素敵なバレンタインにしてくださいね。
そして、本当に最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
これからもSalalaをどうぞよろしくお願いします。
2011.2.7