「ひっ、ひっ、ふーっ!」
そう言ってお産の呼吸をしているのは、白魔 真鈴(シロママリン)見習い魔法使いだ。
今年16才を迎えた高校2年生。
「真鈴…それはお産の時の呼吸法よ。普通に深呼吸なさい」
そう言って苦笑いを浮かべるのは真鈴の母親、白魔 華鈴(シロマカリン)だ。
「お母さん!!」
真鈴は華鈴に駆け寄る。
「真鈴は危なっかしくて
不安だわ…。こんなんで本当に大丈夫なのかしら…」
華鈴は不安そうに真鈴を見つめる。
そんな母親の心配に真鈴は気付かない。
「大丈夫だよ!任せなさーい!」
友達だって沢山作っちゃうんだから!
それで、出来る事なら恋だってしたいな。
楽しそうに浮足立っている真鈴を見て華鈴は溜息をついた。
「真鈴?遊びに行くんじゃないのよ?
修業しに行くのだからしっかりなさい」
華鈴はそう言って真鈴のおでこを軽く叩く。
華鈴がお説教をする時は、何故かいつもおでこ限定なのである。
「痛いよ!お母さん!」
そんなに心配しなくたって平気だもん。
修業はちゃんとやるし、それに魔界での成績だって
トップだったんだよ。
自慢の娘じゃん!文句無いじゃん!!
「心配しすぎだよ!」
真鈴は唇を尖らせた。
「これが心配せずにいられますか!!
あなたは勉強が出来ても学校生活の態度が悪かったでしょう?
人間界に降りたらまずは挨拶、そして笑顔、人とのコミュニケーションが…」
話しが長引きそうなのでそろそろ退散しようかな。
お母さんの説教を最後まで聞いてたら一睡も出来ないからね。
「行くよ…ネア…」
真鈴は小声で黒猫のネアを呼びながら手招きする。
「勝手に行ったら怒ると思うよ」
真鈴は不敵に笑う。
「逃げるが勝ちっていうことわざが人間界にはあるんだよ」
ネアは諦めたように溜息をついた。
「全く…お転婆娘だね」
「お褒めの言葉ありがとう」
真鈴は笑ってネアを抱き上げる。