「第一お前……どこでこんな店」


「いや、たまたま見かけたんだよ。一回これ君に着せてみたいと思ってたんだよね」


「……」


マジではっ倒してぇ。


じろりと睨みつけたとき、覚えのある視線に気づいた。


「かっこよくなーい?」

「ホントだ…。あの一見ダッサい服がまた似合う~」


一見ダッサい服って…。

俺のことかよ…。


「……絶対いい男が台無しになると思ってたんだけど……そうでもないみたいだね…」


「てめぇ…」


「でもほら、君だってことは気付いてないよ? ま、成功だ」


本っ当になんでもかんでもしれっと言いやがる。

真裕も大概だが、こいつも分かんねぇやつだ。


周りには一切興味ないような顔していながら、今回なんか遠回しに俺を助けているわけだし。

洞察力が鋭く、時々こっちが驚くようなことに気付いていたりもする。

しつこいようだが興味がないように見えて、人をよく見ているやつだ。


「急ごう。もしかしたら誰か気付くかもしれない」


時間喰ったのは誰のせいだととても言いたかったけれど、ぐっと押しとどめていつの間にか拾っていたらしいタクシーに乗り込んだ。