――楓サイド――


日本に降り立った俺が、まず一番にした(されたともいう)こと。


「はい、これかぶってこれ着てこれ付けて」


「…おい」


「んでー…これは僕に。これはい」


「……おい…」


この野郎…。

目が楽しんでやがる。


「くくっ…似合ってるよ楓くん」


「……」


なんなんだよこの古臭いファッションは。

ぜってぇわざとだ。


「これなら絶対にバレないね」


「あのな…」


こんな何十年も前の流行りみたいなかっこうさせるか普通。

バレるバレねぇ以前に外歩けるか馬鹿野郎。


「でもきっと君ん家すごいよね?」


「いや…。パリにいるってこっちにも知れ渡った頃だろ」


逆にもう…いねーんじゃねぇかな。


「あ…。それもそうだね。僕としたことが」


肩をすくめてそう言うと、蓮二の馬鹿野郎は、俺を連れ込んだ怪しげな店を出た。