――楓サイド――
買ったものをぶら下げて真裕の待つ部屋に戻り、ドアに手をかけたそのときだった。
『――…んたはどうなの?』
『なにが?』
……?
『本当に楓と婚約してもいいとか思ってる?』
「…………」
は…?
『えっ』
今まさに開けようとしていた扉。
思わず手を止めてしまった。
『……結婚てこいびとどうしの人がするんでしょ? じゃあ無理かな…』
『なんでよ? 今からなればいいじゃない』
…簡単に言う。
なればいいというのは百歩譲ってよしとしよう。
そこじゃねーんだよ。
その恋人というものになれないだけだ。
真裕は確かに俺に懐いている。
かといってあいつに恋愛感情は押し付けられない。
あの、まっすぐで純粋で無邪気で。
白しか知らない真裕の世界を俺は、俺の欲望で穢したくねぇんだよ。