電話を始めた真裕がぽんぽん言いだした内容を聞いて、改めてやっぱりこいつ生粋のお嬢様だな…と実感した。
「あ、お兄ちゃん? 今から帰るから裏口いいようにしといてね。あ、それから目立たない車を至急調達してくれる? どんなのでもいいから」
車……買えってことかよ。
「そのあとで家具一式三部屋分用意して。女の子もいるんだからイタリア製の、生地のいいやつね?」
……おいおいおい…。
それも新たに買うのか。ねぇのかそんくらい。
「野木さんにはホンット悪いんだけど出してもらってね。…え? お兄ちゃんが? やだよそんなの。死にたくないもんそんなことで」
「…真緒って本当にお嬢様なのね…」
「『イタリア製の生地のいいやつ』だって」
「『至急車調達して』やって。いっぺん言ってみたいな」
この程度でそんなこと言ってたら、こいつとは付き合ってられねぇ。
家行きゃ言葉も失うぞこいつら。
「ほんじゃお願いねー」
そう言うと、電話を切って返しに来た。
「かっくんありがと❤あとお腹すいた」
「俺に言うな」
「えーっ。じゃあ誰に言うの?」
あのな…。