「真裕~~~っ真裕真裕まひ…」
「かっくんあれ父様」
「ああ…うん。見れば分かる」
そうなの?
みんな「え!? あれが藤峰洋平!?」……って言うのに。
テレビとかで見るのと全然違うって言ってなかなか信じてもらえないのに。
かっくんすごいねぇ。
「真裕ー……ん?」
「どうも…」
「ああ君か。噂の天才バイオリニストは」
途端に仕事モードの時みたいにきりっとした表情、一オクターブ低い声になったこの父様を少し紹介しましょうね。
藤峰洋平三十九歳、世界を股にかける音楽家であり、なんかどっかの会社で偉い人やってるらしい。
そして、藤峰家の現当主だ。
仕事ですごく忙しいはずなのに、なぜか一週間の半分は家にいた人。
家族思いといえばそれまでなんだけど、見てればなんか違う気もした。
「ふう…ん…」
「…?」
「やっ、さしたる問題はないね! 美形だし腕は確かだ。ようしっ、君私のとこへ来なさい」
「……」
「……」
……は?