…そう。

ウィーンに行くということは。

かっくんと……離れるということ。


パリに帰った時とは違う。

今度は…。


『もちろん、すぐにとは言わない。学校もあるのだし……正式な手続きを踏んでからだ』


「……」


『それから二年間……ウィーンで私と音楽活動をしてもらいたい』


二年…間…!

そんなに…?


両手を握りしめ、食い入るようにケインを見つめる。


『君はもう十分に才能も腕もあるし、名前も売れている。だから二年で済むんだよ』


「あ、の…」


『大丈夫だ。時間はたっぷりある。そうだな……来月中に決めておいてくれ。これは私の番号だ。いつでも連絡してくれればいい』


確かに、突然すぎて考えられないというのもある。

だけど…。


行かない、という選択肢は、あたしの中にすでにない。


かっくんと離れたくないけれど。

二年も……会えないのは不安だけれど。


だけど、これは先生の意志でありあたしの意志でもある。

何年も前の約束。


そのためなら……あたし。