隣接したホテルにみんな泊まり込みらしいんだけど、あたしはそれが嫌なのだ。
「かっくん~。帰りたいよ」
「琥珀達ならちゃんと…」
「ちっがうもんちっがうもん!」
琥珀と梨音も確かに心配だけど…でもちゃんとペットホテルに預けてきたもん。
そうじゃなくて……そのホテルに問題がね?
「あすこ……うちのホテル…」
「……」
「……」
「……」
「……」
避暑地として有名な軽井沢には、別荘だけでは飽き足らずホテルまでつくってしまった父様。
…のくせして、本人一回しか軽井沢来たことないんだけどね。
「なんてーか……。藤峰家、神出鬼没?」
「いや、明らかに違うと思うよ」
本人は一回しか来たことなくても、あたしはホテルに顔を出したことがある。
父様の代理で……行ったりとか。
顔は思いっきり知れてるよ。
「この際隠れてりゃいいから。名簿も武藤真緒だし…」
「うん…でも…」
なんか今日はついてない気がするんだよね。
転げるし東雲さまには気付かれるし。
やーな予感が…。