―――……
「というわけであたくしはこれで」
「待てい」
―ぐゎしっ
「……」
ちっ。つかまった。
さりげなく帰ろう作戦大失敗。
「どこ行くのかしらねぇ真緒ちゃん?」
「え…っとぉ……鈴木くんのおうち?」
「あらだあれ?」
「えっと……山田さんのお友達」
「どこで知り合ったのかしらね?」
「え…っと…田中さんの紹介で…」
「真裕おいで」
「行くっっ!!」
即答して、広げられた腕の中に飛び込んだ。
「……ちょっと。そういう手があるならもっと早くに使いなさいよ」
「切り札は最後までとっとくもんだ」
にゃあ~んかっくん❤
すりすりと、かっくんの胸に頬をすり寄せた。
今は夜の八時半。
音楽祭第一日目は終わり、今日のお客様がお帰りになられた後なんだ。