「もし二人が予選選考に来てたら、あんたなんて一秒で首落ちるわよ!」
「いやいや首は落ちねぇよ? ここに来ないだけで」
「ものの例えよいちいちうっさいわね」
「そうよだからもてないのよあんた」
「なにを! 俺はこれでも今までに十五人の女を抱い…」
「うにゃっ」
「……は」
「え」
「……」
ハア……。
言わんこっちゃねぇ…。
白熱する言い合いの中……ひときわ目立って間の抜けた声。
むろん、それは俺の真裕だったりする。
「……」
しかもド派手に転んだせいなもんだから……泣きそうな顔になっ…。
「ああ~んっ! かっくん転んだぁ!」
「あーはいはい…」
起き上ればいいものを、なぜかそのまま俺を呼ぶ真裕。
ため息をつきながらも、それを可愛いと思ってしまうわけだから…俺も重症だ。
助け起こしに行こうと腰を上げたその瞬間だった。
「だいじょおぶかいっ? 君バイオリンの真緒ちゃんだねぇホントに可愛いねぇ」
「……」
「……か、楓。今どっかからピシって音がした気がするんだけど」
「目に殺気がこもってるよ。抑えて抑えて」