女子対風間みたいな対決が、なぜか始まってしまい。
「第一ピアノやるのに手にそんなアクセサリーじゃらじゃらつけていいと思ってんの?」
「いや、これはおしゃれじゃん? 関係なくね?」
「意味わかんない! だから嫌いよあんたって!」
「え、俺お前に嫌われることまだしてないんだけど」
「まだってなによ! なんかする気なの?」
「いやいやそれ以前の問題じゃね?」
ハア…。
くそめんどくせぇ。
いっそ帰ってしまおうか。
ちらっとそんなことまで思ってしまったものの、今逃げ出そうというのは、要塞から逃げ出すのと同じくらいに難しい。
マスコミと警備員が建物中に散らばっていて…ほぼ百パームリ。
「かっくん~…ひまぁ」
「まあ待て。これが終わりゃ始まる」
「うん…。あ、かっくんなに演るの?」
「知らね」
「……それってどうよ」
大概、有名どころのバイオリン協奏曲だろ。
それならもうぶっつけ本番で十分。
「あすこに楽譜があるよ。取ってくるね!」
「あ、待て…」
止めようと手を伸ばしたときにはもう遅く、真裕は立ち上がって行ってしまった。
そして。