「ふ、藤峰様!?」


「藤峰様…!? 今そう仰らなかった、東雲会長…?」

「うそ…! まさか本当に藤峰様が?」


驚きを露わにするのは、無理やり頭を下げさせられているその男だけではなかった。


「…ま、真緒…!」


忘れていたが、隣には花梨達もいる。

バレた…と心配しているんだろう。


「……!?」


ちらっと真裕を見下ろしてみて、驚いた。



「……構いません。頭を上げてください」



…まるで、別人だ。

目付き、表情、口調。

すべてが、まるで別人だった。


「ま……お…?」


俺も…花梨も…修平も…蓮二も。

ただ黙って、呆然と見ているしかなく…。


「誠に申し訳ない。ましてこのような若輩者が、貴族の末裔である貴女に…」


顔をあげながらも、まだ謝罪の言葉を口にする東雲会長。


「構いません。触れてはならないというしきたりはもうありません」


「やはり貴女は、先代とは正反対の考えをお持ちのようだ」


そう言う東雲会長に、口元に僅かな笑みをみせて小さく頷いてみせる真裕。

その後にすっと一歩下がり、俺の腕に手を通す。


「…?」


「や! これはこれは。申し訳ない。では失礼しよう」