「それより真緒ちゃんは大丈夫なの?」
思い出したのかぷんぷん怒り出したりんりんを横目に、蓮くんがあたしに言った。
「だいじょうぶってなにが?」
きょとんとして聞き返すと、「ハア…」と後ろでため息が聞こえた。
「?」
「いや…本来なら君、あそこに混じっててもおかしくない人だよ」
「あそこ?」
指差された先を視線で辿る。
……会場? なんで?
「ほら。あのへんは音楽企業のトップ達だろ? 藤峰家の令嬢としてそっちに混じるってこともある。それかバイオリニストとしてあっちの音楽家集団に混ざることもあるしね」
「はっ……」
「今さら気付い…」
「東雲さまっ!」
「……は?」
ああああそこにいらっしゃるご年配のおじさまは東雲さまでは?
いらしてたんですね…。あはは、はは…。
「誰よ? どれよ?」
「あれあれ。去年か一昨年に、家と何かの契約をするっていうんで取り引きしたことがあるの。顔見知り」
「……東雲コーポレーションの会長と顔見知りって」
あの時の取引できっと、音楽業界にも手を伸ばしたんだね。
でなきゃ東雲さまがこんなとこにはこないよー。