「私の初しゃべりはママじゃなくてまんまだったわよ」
「どっちでもええねん」
お前もだよ。
言い出したのお前だろうが馬鹿野郎。
「ハア…。今のうちにこいつ連れて帰るんで車を…」
「あっらー大きいわよ? 最初にまんまなんて言ったもんだから私今ちょっとヤバいのよねー。ママって言った子はかわい~く育つのよ❤」
「そら偏見やでセンセ」
「……」
…二人まとめて地中海に沈めてやる。
「あっ、そうそう車ね? 車出しましょうね。待ってて」
睨みがきいたのか、ぽんっと手を叩いて慌ただしく出ていった。
この上なく面倒くさい。
ちなみに今は、丸くなって俺の腕の中で眠っている真裕。
離そうとしようもんなら寝ながら泣き出す始末。
母親を恋しがって不安がる子供そのもの。
「お前代わりに家帰っといて」
「……代わりにっておかしいよね」
倒れるほどショックを受けている真裕を放ってはおけない。
本人の言うようにパリに帰すわけにもいかないし…しばらくまた泊まり込みだ。
とはいえ夏休み中も家に帰ってないわけだし、さすがに気になる。
……末の、苦渋の提案なんだが。
「君頭はいいのに時々可笑しいよね」
「…こいつじゃあるめぇし」