あの女を疑おうと思えばいくらでもできる。

でも根拠なく嘘だと決めつけて…安心できるわけがない。


「結局何も分かっちゃいないままだ」


「分かんないのは私よッ! 説明しなさい!!」


真裕が寝ているというのにものすごい形相で怒鳴るのは……当然、運悪くこの場に居合わせた校医である。


「名前を変えてるですって? 藤峰真琴ですって? なんの話してるのかしらね? …それからさっきから星野くん真裕とか言ってない? 私これでも勘はいいのよね」


「…そうすか」


それなら話が早い。


「そういうことですけど」


「あっっっっさり認めるのね。まだ何も言ってないのに」


「たぶんそうですけど」


「あら。じゃ私が実はこの子は宇宙から来た侵略者で藤峰真琴を人質に取ってるんだけど娘である真裕さんから釈放要求があったんじゃないのとか言ったらどうするのよ」


「……」


ここにも真裕傾向のある人がいたとは。


思わず頭を抱えそうになりながらも、本人の許可なしに…というのが気にかかったもののあらかたを説明した。

といっても、武藤真緒は藤峰真裕だということ、それはわけあって隠していること。

そのくらいなもんだ。


「まあまあ…。まー……。……まあまあまあ」


「せんせえ。初めてしゃべるようになった赤ちゃんみたいやで」