「星野様、お嬢様が熱を出されたらこれを飲ませて差し上げて下さい。小さい頃からよく風邪をひいてらっしゃったので…常備してあるんです」


「は、はあ…」


「お願いしますねお願いしますね! お嬢様をお願いしますね!?」


「は、はい」


あまりの坂本さんの勢いに、さっきからかっくんはたじたじ。

てかもう涙目だし。坂本さん涙目だし。


「なにかありましたらすぐにわたくしに一報くださいね? 坂本はすぐに参ります」


「うん。わかった」


「ではお嬢様…お元気で」


「うん。坂本さ…え"」


坂本さんもねって言おうとしたら…もうほんと、涙目っていうか泣いてたから思わず言葉を止めてしまった。


「だ、大丈夫だったら…」


「分かっております分かっておりますぅ…」


まあ……坂本さんの気持ちは分かる。

あたしも寂しいしね。


いつかも言ったけれど、坂本家は代々家に仕えてきた家系。

だからか、彼女はあたしと十も違わないけど、あたしが生まれた頃からずっと専属でお世話してくれた。

お姉ちゃんみたいに一緒に育ち…お母さんみたいに見守ってくれる人。


「またすぐ帰ってくるよ」


「はい! お待ちしております」


涙ぐみながらも笑顔でそう言ってくれた坂本さんに手を振って、飛行機に乗り込んだ。