「大変申し訳ございませんが、お断りさせていただきたく存じます」


「……!」


確かに……あの藤峰洋平に腕を買われるのはまたとないことだろう。

こんなチャンスは二度とないかもしれない。

でも俺は……それより大事なものがある。


「俺がバイオリンを始めたのは、“藤峰真裕”の影響です。彼女の演奏に惹かれた」


あいつの…自由な音楽に。

俺も自由に演ってみたい。

そう思った。


「だから俺は、特に上に上がろうとは思ってませんし、今の音楽と……」


「…?」


「真裕に教わった今の音楽と、真裕自身を守りたい」


そばに…いたい。

あいつのためにじゃない。

俺が、あいつのそばでくつろいでいたい。


「……」


「……」


それを最後に、しばらく室内は静まり返った。

やがて。


―がばっ


「…!?!?」


んなっ……。