「お着替えがすみましたらお食事をお持ちしますね。本日は和食にございます」
「わしょく?」
「はい。なんでも、ボンゴレの味噌スープが美味だそうで」
ボンゴレの……味噌スープ…。
…あさりのおみそしる?
父様が好きだ好きだって散々言ってたやつ?
…へー…。
「父様がそう言ったの?」
「いえ。青木様が……」
『明日の朝飯、白米と味噌汁と魚と卵焼きにしてくれまへん? 日本のおふくろの味やで。さかもっちゃん知らん?』
「…と」
「……」
しゅっちゃんや。
この坂本さんはね、お兄ちゃんと一緒で……昔からうちに仕えてきた一家なのよ。
だから、純日本人だけどパリ生まれのパリ育ちなんだよ。
知らないと思うよ、うん。
だってボンゴレの味噌スープとか言ってるし。
そのまま日本語で言えばいいのにね。
「まおも食べてみたい。もうご飯にする」
「かしこまりました。ただいまお持ちします」
そう言って一礼すると、坂本さんは足早に去っていった。